韓国はMMORPGを牽引する最大の国家だ。日本でプレイできるMMORPGの大半が韓国のゲーム会社から生まれた作品だ。ここ数年はスマートフォンの普及に伴い、スマートフォン向けのMMORPGが開発されてきた。そうなるとデバイスによる制約によりシステム、コンテンツ、グラフィックは進化せず停滞状況となる。そうした中、近年では変化の兆しが見えてきた。
MMORPGの黎明期では遊べるデバイスはPCしかなかった。その後、スマートフォンの普及により多くのユーザーがMMORPGに触れる機会が増えた。今ではPC、スマートフォン、コンソールと、遊ぶデバイスを選択できる時代になりつつある。そして大衆が求めるゲーム性の向上、PCユーザーの増加など様々な要因が重なり、PCをベースとした高グラフィックMMORPGの開発が着実に進んでいると感じている。
2023年に発売される韓国産のMMORPGはこれまでの認識を覆すほどの完成度で発売されることだろう。期待される韓国産MMORPGを5つに厳選して紹介する。また、これから紹介するMMORPGは日本ではなく、韓国で2023年内に発売予定の作品なので注意してほしい。
『ArcheAge War』
『ArcheAge War』はPC MMORPG「ArcheAge」の世界観を継承するPCとスマートフォンのクロスプラットフォームMMORPGだ。時間軸は原作「ArcheAge」以前の時代を描いている。また、原作「ArcheAge」が農業や貿易などの生活コンテンツ中心のゲーム性に対し、『ArcheAge War』はタイトルに「戦争(War)」と付けるほど戦争、戦闘コンテンツを強調している。MMORPGの特徴である広大なマップをベースとしたフィールド戦や攻城戦から海上戦など大規模な戦闘コンテンツを披露する予定だ。
現在『ArcheAge War』で使用できる武器は「両手剣」「片手剣」「弓」「短剣」「杖」の計5種類が確認できる。着用した武器によって駆使できるスキルと攻撃範囲などが異なるため、プレイヤーごとの役割が明確化され、協力要素が強調された戦闘になりそうだ。
『ArcheAge War』はPCとスマートフォンのクロスプラットフォームでプレイが可能だ。Unreal Engine 4でシームレスマップを実装しているとのこと。2023年春に韓国で正式サービス開始予定だ。
『WARS OF PRASIA』
『WARS OF PRASIA』は「攻城戦の大衆化」を目指し、ゲーム内のギルドコンテンツである「結社」を拠点の占領により成長させ、様々なコンテンツを楽しめる作品で、PCとスマートフォンのクロスプラットフォームに対応している。
本作はすべてのプレイヤーが「結社」に所属し、キャンプや拠点を所有することができる。戦争の舞台は24時間稼働する数十の拠点が存在するシームレスワールドで、お互いに拠点を占領するために熾烈な戦闘が繰り広げられる。ポーションを購入する空間でも戦闘が起こるほど自由度の高い戦争システムとなっている。
『WARS OF PRASIA』の開発、運営を手掛けるNexonは「没入感のある世界観と物語、深みのあるコンテンツを通じてユーザーをゲームに引き込み、自然に結社を活用したコンテンツを楽しめるよう「攻城戦の大衆化」を実現する」としている。
『WARS OF PRASIA』は韓国で2月16日に事前登録を開始し、2023年内の発売を予定している。
『アスダル年代記』
『アスダル年代記』は韓国ドラマを原作としているMMORPGだ。開発、運営を手掛けるNetmarbleは「冒険の楽しさ、戦闘の楽しさ、社会の楽しさを再現した」と述べている。原作の世界観を拡張し「冒険の楽しみ」を、アクション性と役割を強調した協力ダンジョンを通じて「戦闘の楽しさ」を、MMORPGの核心である政治と戦争を通じて「社会の楽しさ」を提供する。
プレイヤーは主要勢力である「アスダル」「アゴ」と傭兵の役割を担う「無法勢力」の3つの勢力から所属する勢力を選択する。無法勢力は主要勢力の傭兵になることで戦争に参加し、両勢力のバランスを保つ役割を担うとのことだ。
Netmarbleは「一定周期で勢力のバランスを計算し、劣勢勢力には傭兵補償の変動が生じ、無法勢力が傭兵の役割を全うし、両勢力のバランスを保つ。その過程で連盟間の政治・経済的な利権争いがこのゲームの差別化ポイントになるだろう」と述べている。
また、『アスダル年代記』には重要度の高い生活コンテンツが存在する。昼と夜、天気、気候などがキャラクターの成長、アイテムファーミングに至るまで、非常に直接的で重要な影響を与える。
例えば、極地の冷帯地域では寒さと悪寒で能力値が減少する。プレイヤーは暖かい衣装と料理で寒さに耐える。また、温かい料理を作るために熱帯地域でのみ採集できるハーブを集めたりする必要があるなど、生活コンテンツの重要が高いシステムとなっている。
『アスダル年代記』はPCとスマートフォンのクロスプラットフォームでプレイ可能だ。韓国で2023年内の発売を予定している。
『THRONE AND LIBERTY』
『THRONE AND LIBERTY』はNCSOFTが開発、運営を手掛けるPCとコンソール向けMMORPGだ。スローガンは「PLAY FOR ALL」であり、国と世代を超越してみんなが楽しめるゲームを作ろうという目標で開発されている。
NCSOFTはバトルコミュニティを基盤に戦闘と競争を繰り広げる「THRONE」、環境が生きているワールドで冒険と自由を満喫する「LIBERTY」、国と世代などすべてを1つに繋げる「AND」を『THRONE AND LIBERTY』の大きな方向性として定めている。
『THRONE AND LIBERTY』はフリークラスシステムを採用している。クラスや職業といったゲームの枠組みに縛られない作りとなっている。2つの武器を装備可能で、多様なスキル連携や相性の良い武器の組み合わせなどのビルド構築を楽しむことができる。
また、『THRONE AND LIBERTY』のPvPコンテンツの参加の可否はプレイヤーが選択できる。ほとんど地域がPvP不可の安全地域に設定されており、ボスなどの特定の競争イベントに限定してPvP地域として活性化される。この時、PvPに参加するかどうかはユーザーが選択できるとのこと。
『THRONE AND LIBERTY』は韓国で2023年上半期に発売を予定している。
『NIGHT CROWS』
『NIGHT CROWS』はUnreal Engine 5で制作されるMMORPGで、PCとスマートフォンのクロスプラットフォームに対応する。リアル調のグラフィックで中世ヨーロッパの世界観を再現し、没入感を高めている。現時点で詳しいゲーム情報は公開されていないが、プレイ可能なキャラクターは16種でオープンワールド型MMORPGになる予定だ。
これにより、1,000人単位の大規模PvP、グライダーを活用して地上と空を行き来するアクション、キャラクター間の物理的な衝突の実装など果てしなく広大なオープンワールドで多様な戦闘体験を提供する。
『NIGHT CROWS』を開発するMADNGINEはスマートフォン向けMMORPG「V4」の開発を総括したソン・ミョンソク代表とアクションRPG「ヒット」「オーバーヒート」を開発したイ・ジョンウク代表が共に設立したRPG専門開発会社だ。アクション、戦争に定評のある両作の経験から『NIGHT CROWS』の大規模PvPには期待の声が大きい。
『NIGHT CROWS』は韓国で2023年4月の発売を予定している。
どのMMORPGも非常に完成度の高い作品となっている。作品ごとのコンセプトは違えど、PCとスマートフォンのクロスプラットフォームなどデバイスの境界線はなくなりつつある。デバイスの制約がなくなり、純粋にゲームの面白さが問われる時代になるだろう。そんな中、懸念されるのが「課金システム」だ。
韓国ではたびたび国会で議論されるほど「確率型アイテム」への非難の声が上がっている。ビジネスとして課金システムを確立しなければ、ゲームが成り立たない。運営、ユーザーともに納得のいくビジネスモデルを構築できるかが、存続の命運を分けそうだ。